2012年5月、関東インカレ(関カレ)。早稲田の4×100mR(4継)と4×400mR(マイル)の2種目制覇に会場のボルテージがあがった。
それから約4か月―。学生チャンピオンを決める日本インカレ(全カレ)で、またしても早稲田がリレー2種目制覇を成し遂げた。関カレ・全カレ両リレー優勝は創部以来初の偉業。マイルメンバーにして競走部主将である浦野晃弘(スポ4)は、「新しい歴史を見せられたかな」とほっとした表情を浮かべた。
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4×100mR表彰式。左から北村、九鬼、竹下、三原
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全カレ初日。
大会のトップバッターを4継が飾った。予選のオーダーは北村拓也(スポ1)―九鬼巧(スポ2)―梶将徳(スポ4)―三原浩幸(スポ2)。 2、3走間でのバトンミスも影響し、タイムで拾われての決勝進出となった。
2走の九鬼はこの時の様子をこう振り返っている。
「僕がレースを壊してしまって、申し訳ない気持ちが大きかった」。
自分の走りが出来なかったことに不安があったと言う。
辛くも掴み取った決勝の舞台。
ここで3走を梶から竹下裕希(スポ2)に変えた。
早稲田は8レーン。通常このレーンは周囲が見えないため不利と言われる。
しかし、早稲田の必勝パターンは先行逃げ切り型。「8レーンと聞いて逆に優勝へと気持ちが固まっていった(九鬼)」と俄然士気が高まった。
レースは混戦を極める中、3走竹下がトップに立つと、アンカー三原がそのまま死守してゴール。タイムは39秒19のシーズンベストだった。
だが優勝に嬉しさをにじませつつも記録には満足していない。「38秒台を狙っていかないと」と、来る日本選手権リレーでは一歩上を見据え、長年破られていない早稲田記録の更新を狙う。
大会後半となる3、4日目にはマイルリレーが行われた。
牧野武(スポ4)―木村賢太(スポ1)―永野佑一(スポ2)―野澤啓佑(スポ3)と、浦野と竹下を抜いたオーダーで挑んだ予選。主力不在の中、堅実に組内1着での決勝進出を果たした。
そして大会最終日のトリを彩る決勝。2走に竹下、3走に浦野を投入した。
スタートとともに牧野が飛び出し、5番手でバトンパス。バトンを受けた竹下は序盤後退し、順位を落としたかのように見えた。しかしそこは計画通り。「ああいうプランで行くと事前に決めていた」と話すように、中盤からは前を走る選手をぐいぐい交わし、2、3番手でバトンを浦野へと渡した。浦野は序盤にすっと2番手へ上がると、200m付近で首位中京大を交わし、トップに立つ。これが4年生の意地なのか?と問うと、「意地というよりも、最後に皆で魅せたい、何か残そうと思って。そういう気持ちが強かった。」と浦野。そのまま首位をキープしてアンカー野澤へと託す。このまま優勝かと思いきや、後方から中京大がじわじわと詰め寄り、中盤でついに抜かされ、大接戦に。しかし、そこで引かないのが早稲田。野澤は粘りある走りでホームストレートで中京大を抜き返すと、トップで仲間の元へと飛び込んだ。
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4×400mR決勝レース直後の様子。
左から野澤、竹下、浦野、牧野
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全カレのマイル優勝は昭和58年以来の快挙であった。しかし、学生チャンピオンの座に甘んじることは決してない。次なる日本選手権リレーに向けては、「学生チャンピオンではなく、次は日本一の早稲田を見せたい」とやる気十分。三冠達成はすぐそこまで来ているようだ。
彼ら短距離勢を統括しているのが、梶だ。優しさを持ちつつも、ブロック長として伝えるべきことは伝える。「梶が夏に記録を出してきたことでブロックも勢いづいた。とても良い存在。」と浦野主将からの信頼も厚い。
後輩の九鬼は、全カレ決勝で走ることができなかった梶を「優勝して嬉しい反面、悔しい気持ちも大きかったのでは」と推しはかる。
その梶にとって学生最後のリレーとなるのが日本選手権リレーだ。誰が走ってもおかしくない層の厚さの中、「梶さんもメンバーに加わってほしい。そしてチームで優勝して締めくくりたい」と九鬼。
リレー最終冠は今まで引っ張って来てくれた先輩とともに―。こんな暖かくも切磋琢磨できる環境が今の短距離陣にはある。そしてこれこそが『短距離の早稲田』を復活させた秘訣でもあった。
【男子4×100mR結果】
◇予選 4組3レーン 北村-九鬼-梶-三原 39秒90 (2着) 決勝進出
◇決勝
8レーン 北村-九鬼-竹下-三原 39秒19 (1位)
【男子4×400mR結果】 ◇予選 2組5レーン 牧野-木村-永野-野澤 3分08秒91 (1着) 決勝進出 ◇決勝
4レーン 牧野-竹下-浦野-野澤 3分05秒75 (1位)
関連URL
早稲田大学競走部公式サイト
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